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付録

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本Web参考書の最終章である付録では、これまでの学習で登場した重要事項をコンパクトにまとめ、試験直前の最終チェックや、苦手分野の克服に役立つ情報を提供します。重要判例、頻出条文、専門用語、そして最新の法令改正情報まで、合格に必要なエッセンスを凝縮しました。


A.1 重要判例集(判例の事案と結論、ポイント)

行政書士試験では、具体的な判例の知識や、判例が示す法原則が問われることが多々あります。ここでは、特に行政書士試験で頻出の重要判例を抜粋し、その概要とポイントをまとめました。

判例名・日付関連法分野事案と結論ポイント(試験対策上重要事項)
最高裁判所昭和31年10月24日判決(猿払事件)行政法(公務員法)公務員の政治的行為の制限の合憲性が争われた事件。公務員の政治的行為は、公務の円滑な運営を確保するために必要最小限度の範囲で制限できるとし、当該制限を合憲と判断した。公務員の政治的行為の自由の制約の合憲性。公共の福祉による制限の具体例。
最高裁判所昭和48年9月19日判決(北方ジャーナル事件)行政法(行政指導)出版の差止めを求める仮処分命令の申立てがなされた事件において、表現の自由の事前抑制の限界が争われた。事前抑制は原則禁止とし、公共の利益を害する明白な危険がある場合にのみ許されるとした。表現の自由の事前抑制の原則禁止。厳格な基準を設けることの重要性。行政指導の限界を示す一例ともなる。
最高裁判所平成元年11月8日判決(大阪国際空港騒音訴訟)行政法(国家賠償法)空港の騒音被害による損害賠償請求及び夜間飛行差止請求がなされた事件。国による飛行行為は公権力の行使にあたり、騒音被害は受忍限度を超えているとして、国家賠償責任を認めた。差止請求は、公共の利益を考慮し認めなかった。国家賠償法の「公権力の行使」に当たるかどうかの判断。受忍限度論。差止請求の限界。
最高裁判所平成17年12月22日判決(ライブドア事件判決:株券に関する部分)会社法(株式)株券発行会社における株券の交付の要否が争われた事件。会社法改正前の判例だが、株券の引渡しのない株式譲渡は、譲渡人・譲受人間では有効だが、会社や第三者に対抗できない旨を明確にした。会社法の株券不発行原則(現行法)につながる考え方。株式の譲渡と対抗要件に関する重要性。
最高裁判所昭和37年2月8日判決(最判昭37.2.8)民法(意思表示)土地の売買契約において、錯誤があったとして取消しが認められるか争われた事件。動機の錯誤は、その動機が表示されて相手方も知っていた場合に限り、法律行為の要素の錯誤となり取消しうるとした。錯誤による意思表示の取消しの要件。動機の錯誤の扱い。
最高裁判所昭和49年9月26日判決(最判昭49.9.26)民法(不法行為)夫から暴力を受けていた妻が、離婚後に夫とその愛人に対し不法行為に基づく損害賠償を請求した事件。婚姻関係が破綻していた場合でも、不貞行為が夫婦関係を破綻させた原因である限り、慰謝料請求は認められるとした。不法行為の成立要件。不貞行為と損害賠償の範囲。
最高裁判所平成14年1月25日判決(最判平14.1.25)民法(債権総論)債務者が所有する土地を第三者に売却し、債権者がその行為が詐害行為にあたるとして取消しを求めた事件。債務者の行為が債権者を害するものであると知りながら行ったもの(詐害意思)と、受益者もその事実を知っていた場合に詐害行為取消権を行使できるとした。詐害行為取消権の要件。債務者及び受益者の悪意の要件。
最高裁判所昭和60年4月23日判決(最判昭60.4.23)民法(相続法)相続人が相続財産中に借金があることを知らずに単純承認をしてしまい、後に借金があることを知った場合に相続放棄が認められるか争われた事件。相続放棄の熟慮期間(3ヶ月)の起算点は、自己が相続人であることを知った時を基準とする。相続放棄の熟慮期間の起算点。限定承認や相続放棄の検討の重要性。

A.2 よく出る条文リスト(特に重要な条文)

民法、行政法、会社法、憲法など、主要科目の重要条文をリストアップしました。条文の文言だけでなく、その条文が規定する制度の趣旨や、関連する判例、他の条文との関係を意識して学習しましょう。

法令名条文番号条文のキーワード(内容)関連する制度・論点
日本国憲法13条幸福追求権、公共の福祉新しい人権、公共の福祉による人権の制限
21条表現の自由検閲の禁止、通信の秘密、事前抑制の原則禁止
29条財産権公共の福祉による制限、損失補償
92条以下地方自治の本旨(住民自治、団体自治)地方自治の基本原理
行政手続法3条適用除外行政手続法の適用対象、適用されない行政行為
5条審査基準審査基準の設定・公表義務、行政の透明性
12条聴聞、弁明の機会の付与不利益処分の手続保障、当事者の意見陳述の機会
46条行政指導の原則行政指導の任意性、濫用禁止
行政不服審査法1条目的国民の権利利益の救済、行政の適正な運営
2条審査請求の対象行政庁の処分、不作為
9条審査請求期間原則3ヶ月(正当な理由があれば6ヶ月)
行政事件訴訟法3条抗告訴訟の種類(取消訴訟、無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟)行政訴訟の主要な類型、訴訟選択
9条原告適格訴えを提起できる者の範囲、法律上の利益
37条の2義務付け訴訟行政庁の不作為や不適切な対応に対する救済
国家賠償法1条公権力の行使による損害賠償国または公共団体の責任、公務員の故意・過失、職務行為
2条営造物の設置・管理瑕疵による損害賠償道路、河川、建物などの欠陥による損害賠償
民法93条心裡留保意思表示の効力、善意・悪意の相手方保護
94条虚偽表示意思表示の無効、善意の第三者保護
95条錯誤意思表示の取消し、表意者の重大な過失、動機の錯誤
96条詐欺、強迫意思表示の取消し、第三者による詐欺・強迫
113条無権代理本人の追認、相手方の催告権・取消権
162条、166条取得時効、消滅時効(起算点、期間)権利の取得・消滅、時効の完成猶予・更新
177条不動産に関する物権の変動の対抗要件不動産登記の重要性、第三者への対抗
415条債務不履行による損害賠償債務不履行の基本、損害賠償の範囲
540条解除権の行使契約の解除、法定解除権と約定解除権
555条売買契約の成立典型契約の基本、諾成契約
709条不法行為による損害賠償不法行為の基本要件(故意・過失、権利侵害、因果関係、損害)
715条使用者責任特殊不法行為、使用者と被用者の関係
会社法29条株式会社の設立設立登記による法人成立(設立準則主義)
134条株式譲渡の対抗要件(株主名簿記載)株主の確定、会社への主張、第三者への主張
295条株主総会の権限会社の最高意思決定機関、決議事項
326条取締役会の設置業務執行機関、取締役会設置会社の原則
行政書士法1条の2行政書士の業務官公署提出書類、権利義務・事実証明書類の作成、相談
12条秘密を守る義務守秘義務、職務上の義務
個人情報保護法16条利用目的による制限個人情報の適正利用、目的外利用の禁止
20条安全管理措置個人情報の保護、情報漏洩対策
マイナンバー法9条利用範囲の限定(社会保障、税、災害対策)特定個人情報の厳格な利用制限

A.3 用語集(試験に出る専門用語の解説)

試験でよく登場する専門用語をまとめました。正確な意味を理解しておくことで、問題文の読解がスムーズになり、記述式問題での適切な表現にも繋がります。

  • 行政行為:行政庁が、特定の個人や団体に対して行う、法的な効果を発生させる行為。
  • 行政指導:行政機関が、特定の行政目的を実現するため、相手方の任意の協力を求めて行う指導、勧告、助言など(強制力はない)。
  • 処分性:行政事件訴訟法の取消訴訟の対象となる行政行為の性質。国民の権利義務に直接影響を与えるもの。
  • 原告適格:訴訟を提起できる法律上の資格。行政事件訴訟では「法律上の利益を有する者」に認められる。
  • 取消し:有効に成立した法律行為の効力を、特定の者が遡及的に失わせること(例:詐欺による意思表示の取消し)。
  • 無効:法律行為が、はじめから法律上の効果を発生しないこと(例:公序良俗違反の契約)。
  • 制限行為能力者:単独で有効な法律行為を行う能力が制限されている者(未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人)。
  • 善意の第三者:ある事実を知らない第三者。民法では善意の第三者を保護する規定が多く存在する。
  • 対抗要件:ある法律効果を第三者に主張するために必要な要件(例:不動産物権変動における登記)。
  • 時効の完成猶予・更新:時効の進行が一時的に停止したり(完成猶予)、それまでの期間がリセットされて新たに開始すること(更新)。旧民法の「中断」「停止」に対応。
  • 契約不適合責任:売買契約などで引き渡された物が、種類、品質、数量に関して契約の内容に適合しない場合に、売主が負う責任。旧民法の「瑕疵担保責任」に代わる概念。
  • 債務不履行:債務者が、債務の内容に従った履行をしないこと。損害賠償請求や契約解除の原因となる。
  • 履行遅滞:債務の履行が可能であるにもかかわらず、履行期を過ぎても履行がされない状態。
  • 履行不能:債務の履行が、債務者の帰責事由により、物理的・社会的に不可能になった状態。
  • 契約自由の原則:契約を締結するか否か、相手を誰にするか、内容をどうするかなどを、当事者の自由な意思に委ねる原則。
  • 諾成契約:当事者の合意のみで成立する契約(例:売買契約)。
  • 要物契約:当事者の合意に加え、目的物の引渡しなど、物の交付があって初めて成立する契約(例:消費貸借契約)。
  • 特定物債権:特定の物(例:唯一無二の絵画)を引き渡すことを目的とする債権。
  • 不特定物債権:種類・数量は指定されているが、特定の物は指定されていない物(例:〇〇社製ボールペン100本)を引き渡すことを目的とする債権。
  • 不法行為:故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害し、損害を与えた場合に発生する損害賠償義務。
  • 使用者責任:従業員が業務中に第三者に損害を与えた場合、使用者(企業など)が負う損害賠償責任。
  • 法人:法律によって「人」とみなされ、権利能力が認められた団体(例:株式会社、NPO法人)。
  • 株式会社:株式を発行し、株主は出資額を限度に責任を負う(有限責任)企業形態。
  • 持分会社:社員(出資者)が直接会社を経営する企業形態(合名会社、合資会社、合同会社)。
  • 株主総会:株式会社の最高意思決定機関。株主全員で構成される。
  • 取締役会:取締役で構成され、会社の業務執行に関する意思決定を行う機関。
  • 定款:会社の組織、活動、構成員の権利義務などを定めた根本規則。会社の憲法。
  • 設立準則主義:会社が、法律に定められた手続と登記を経て初めて成立するとする原則。
  • 株主名簿:会社が株主に関する情報を記載した帳簿。会社に対する対抗要件となる。
  • 清算人:解散した会社の残務処理(債権回収、債務弁済、残余財産分配)を行う者。

A.4 法令改正情報(2025年度試験対応)

行政書士試験は、法律の改正動向に敏感である必要があります。特に、2025年度の試験に向けては、以下の重要な改正点に注目しましょう。本Web参考書では、すでに各章で触れてきましたが、ここで改めて概要をまとめます。

A.4.1 民法改正:離婚後共同親権の導入(2025年施行予定)

  • 改正の概要
    • 現行法では、離婚後の子の親権は父母の一方に限定(単独親権)されていましたが、改正により、父母が協議または家庭裁判所の判断により、共同して親権を行使する「共同親権」を選択できるようになります。
    • 共同親権とするか単独親権とするかは、子の利益を最優先して判断されます。
    • 具体的な施行日は未定ですが、2025年中の施行が予定されています。
  • 試験対策上のポイント
    • 現行の単独親権制度との比較。
    • 共同親権の導入目的(子の利益の保護)。
    • 共同親権を選択するための要件(協議、裁判所の判断)。
    • 親権の内容(監護教育権、財産管理権)が共同親権の場合にどのように行使されるか。
    • 離婚後の養育費や面会交流に関する変更点(書面化の努力義務など)。

A.4.2 情報流通プラットフォーム対処法(情報流通プラットフォーム対処の適正化等に関する法律)(2025年4月1日施行)

  • 改正の概要
    • インターネット上の情報流通プラットフォーム事業者(SNS、動画共有サイト、検索サイト、ECサイトなど)に対し、違法・有害情報の流通防止利用者保護のための新たな義務を課す法律です。
    • 具体的には、通報窓口の設置、対応体制の整備、迅速な情報削除措置、透明性の確保(情報削除基準の開示など)が義務付けられます。
    • 2025年4月1日施行です。
  • 試験対策上のポイント
    • 法律の目的(利用者保護、健全な情報流通環境の確保)。
    • 対象となるプラットフォーム事業者の範囲。
    • プラットフォーム事業者に課せられる具体的な義務(通報対応、情報削除、透明性確保など)。
    • 国(総務省など)の関与の範囲。
    • デジタル社会における情報トラブルへの新たな法的対応として重要。

A.4.3 その他、民法(債権関係)改正の継続的な確認

  • 2020年4月1日に施行された民法(債権関係)の大改正は、すでに主要な論点として試験に出題されていますが、引き続き重要です。
  • 契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)、時効の完成猶予・更新(旧中断・停止)、債権譲渡の対抗要件保証債務など、改正点の知識を再確認しましょう。

【最終確認のポイント】

法令改正は、試験で「新法(改正後)の知識」が問われるため、特に注意が必要です。施行日を確認し、該当する年度の試験範囲に含まれるかを確認した上で、正確な知識を習得しましょう。


この付録が、皆さんの行政書士試験合格に向けた最終的な知識整理と自信の醸成に役立つことを願っています。これまでの学習の成果を信じ、本番で実力を存分に発揮してください!

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